有名なロンドンドライジン「ビーフィーター」はクリーンで柑橘の香りが強く、各国のバーテンダーに愛されています。
当記事では、そんな「ビーフィーター」の味の特徴や、製法の秘密、原料や歴史について詳しく解説します。
スタンダードな「ビーフィーター」以外にも、「ビーフィーター 24」「ビーフィーター ピンクストロベリー」といった他のラインナップも紹介しますので、ぜひ好みの「ビーフィーター」を見つけてください。
- 都内オーセンティックバーの元バーテンダー
- ウイスキーエキスパート所持
ジンやウイスキーを中心に、これまで300種類以上のお酒を飲んできました。実体験をもとに、「本当に美味しい」と思ったお酒を紹介します。
「ビーフィーター」とは
代表銘柄 | Beefeater Gin |
原産国 | イギリス |
製造元 | ペルノ リカール |
蒸留所 | ビーフィーター蒸留所 |
ボタニカル | 9種類 |
30秒で読める!「ビーフィーター」の特徴5つ
「ビーフィーター」の代表的な特徴は次の5つです。
- 酸味・苦みの力強さのある味わい
- 「ビーフィーター(beefeater)」の名前の由来は、ロンドンの衛兵
- ジンのボタニカルとして、初めてオレンジピールを採用
- ボタニカルは24時間浸漬させ、じっくり7時間かけて蒸留する製法
- アルコール度数は「40%」と「47%」の2種類のボトルがある
「ビーフィーター」の味/レビュー
ボタニカル由来の香味が強く、やや苦みと酸味があります。
フローラルな「ボンベイサファイア」とは対照的で、ジンの力強さが感じられるでしょう。
そのまま飲むとやや苦味が強いので、カクテルベースに使用するといい感じです。
ストレート、もしくはジンライムで飲む場合は、「ビーフィーター24」がおすすめです。
名前の由来
「ビーフィーター(beefeater)」とは、ロンドン塔のイギリス王室の宝を守る近衛兵の集団、ヨーマン・ウォーターズの愛称です。
「ビーフィーター」のラベルには、その凛々しい姿が描かれていますね。
彼らは、国王主催のパーティーの後の残った牛肉の持ち帰りを許されていたことから、beefeater(牛肉を食べる人)と呼ばれていたそう。
ビーフィーターの創業者ジェームズ・バローズは、「ビーフィーター」をロンドンらしいジンにしたいと考え、ロンドンの象徴であるbeefeaterを名前に採用しました。
「ビーフィーター」の製法
力強い味わいを生み出す「ビーフィーター」のボタニカルと製法を解説します。
ボタニカル
ビーフィーターは、9種類のボタニカルが使用されています。
- ジュニパーベリー
- レモンピール
- セビルオレンジピール
- アーモンド
- オリスルート
- コリアンダーシード
- アンジェリカルート
- アンジェリカシード
- リコリス
レモンピール、セビルオレンジピールは、ビーフィーターのキーボタニカル。
セビルオレンジは別名ビター・オレンジといい、果皮が厚くペクチンと油分が豊富です。
ジンのボタニカルに最初にオレンジ・ピールを配合したのは、「ビーフィーター」創業者ジェームズ・バローです。
セビルオレンジピールは、「ビーフィーター」ジンのオレンジ特有の香り、さわやかな柑橘香を生み出す役割を担っています。
ボタニカルを選別しているのは、「ビーフィーター」のマスターディスティラーです。
毎年、彼の下に全てのボタニカルが集められ、ジュニパーベリーひとつとっても150種類以上がそろいます。
他に、ロシアやルーマニア、ブルガリアでとれたボタニカルなどさまざまな素材が集められ、丹念に選別されています。
製法
「ビーフィーター」の蒸留は浸漬法で、ポットスチルで最初の蒸留の後、スチルにボタニカルを加えて約24時間浸漬します。
これは「スティーピング(浸漬)」という工程で、じっくり時間をかけたスティーピングによって、ボタニカルの複雑なフレーバーがしっかりと原酒に溶けこみます。
スティーピングの後は、じっくり7時間かけて再蒸留。
再蒸留したジンの蒸留液の初め(ヘッド)と終わり(テール)の部分はカットします。
なお、ウイスキーの蒸留とは異なり、「ビーフィーター」では前溜液と後溜液はリサイクルされずに処分されています。
ビーフィーター蒸留所にはボトリング設備がないので、蒸留されたスピリッツはスコットランドのグラスゴー近郊にあるキルマリッド工場に送られ、そこで度数を調整し瓶詰めされます。
「ビーフィーター」の歴史【創業者・蒸留所】
ビーフィーター社を興したのは、ジェームズ・バローという人物です。
創業者と蒸留所の設立について紹介します。
創業者ジェームズ・バロー
1863年、薬局を経営していたジェームス・バローは、ロンドンのチェルシー蒸留所を買収しました。
チェルシー蒸留所は、1820年創立の古い蒸留所。
ジェームス・バローはここでジン、キュラソー、マラスキーノ、チェリー・ブランデーなどを製造しました。
薬学の知識のあるジェームズ・バローはボタニカルの配合を熱心に研究し、やがて1879年に、初めてセビルオレンジピールを使ったジンを完成させました。
これが、柑橘系の豊かなフレーバーが感じられる「ビーフィーター」の始まりです。
「ビーフィーター」は発売直後から大人気となり、バローズ社の看板商品へと成長しました。
薬学の知識だけでなく、経営力にも長けたジェームス・バローでしたが、1897年、62歳で逝去しました。
ビーフィーター蒸留所
20世紀に入ると「ビーフィーター」の海外輸出が始まり、事業拡大に伴って拠点はチェルシーからランベスに移動しました。
その後、1958年に現在のケニントンに移動。
販売数は順調に伸び続け、毎年300万ケース(9L換算で、2700万L)もの「ビーフィーター」を製造していました。
全て、このビーフィーター蒸留所で生産されています。
ビーフィーター蒸留所には瓶詰めの設備はないので、蒸留後はスコットランドのグラスゴー近郊にあるキルマリッド工場に送られ、そこで度数調整しボトリングされます。
ビーフィーター蒸留所は、2014年5月にビジター・センターをオープンしていて、自社製品の製造の様子を公開しています。
「ビーフィーター」のおすすめのカクテル・飲み方
おすすめなのは、何と言ってもジントニックです。
ライム果汁と非常に相性の良い「ビーフィーター」は、ほろ苦さと爽快感のバランスが取れた美味しいジントニックになります。
- 「ビーフィーター」ジン30ml
- トニックウォーター90ml
- ライム(1/8カット)
甘めに作りたい方は、ウィルキンソンのトニックウォーター。
ほろ苦さを強調させたい方は、シュエップスのトニックウォーターを使ってみてください。
他にもジンリッキーやジンバックなど、炭酸で割るロングカクテルがおすすめです。
公式サイトでは、さまざまなカクテルレシピが公開されています。
「ビーフィーター」のラインナップ
「ビーフィーター」のラインナップを紹介します。
ビーフィーター ジン
スタンダードの「ビーフィーター」です。
注意したいのが、アルコール度数が40%のものと、47%のものがあることです。
風味をしっかりと感じられるのは47%のビーフィーターで、しっかりとジンらしさが感じられるカクテルが作れます。
アルコール度数が強いものが苦手な方は、40%を選びましょう。
ビーフィーター 24
ボタニカルに日本茶が入っている風味豊かなジンで、名前の24は、24時間刺激的な街・ロンドンのイメージから付けられました。
ビーフィーターの製法の特徴である24時間のスティーピング(ボタニカルの漬け込み)も意味しています。
ボタニカルは次の12種類。
最初の3種類が「ビーフィーター 24」独自のオリジナルボタニカルで、後の9種は「ビーフィーター」にも使用されている共通のボタニカルです。
- 日本の煎茶
- 中国緑茶
- グレープフルーツピール
- レモンピール
- アーモンド
- セビルオレンジピール
- コリアンダーシード
- オリスルート
- リコリス
- アンジェリカルート
- ジュニパーベリー
- アンジェリカシード
味/レビュー
クリアでボタニカルの風味が強く、スタンダードの「ビーフィーター」と全く別物といってもいいほど。
洗練された味で、ショートカクテルのベースにもぴったりです。
「ビーフィーター 24」でマティーニを作れば、キンと澄んだ上品な味わいになるでしょう。
ボタニカルの種類と配合を変えるだけで、こんなに味が変わるのかと驚かされます!
ビーフィーター ピンクストロベリー
2019年に発売した、今、世界中で大人気のピンクジンです。
「ビーフィーター」にストロベリーリキュールをブレンドした、フレーバードジンで、アルコール度数は37.5%と低くて飲みやすく、可愛い見た目に甘いストロベリー風味。
ソーダやグレープフルーツジュースで割って美味しく飲めるので、気軽なパーティーにはもってこいですね。
ビーフィーター クラウンジュエル
1990年代前半から2009年まで免税店限定で販売していた「ビーフィーター クラウンジュエル」。
再発売を求める声に応えて2016年に限定販売されていたボトルです。
クラウンジュエルとはビーフィーターの象徴であるロンドン塔に保管されているイギリス王室の宝物のことで、ボタニカルはには「ビーフィーター」に使用されている9種に加え、グレープフルーツピールが使用されています。
アルコール度数50%の力強い風味に、柑橘の香り。
クラウンジュエルの名にふさわしく、高級感のあるボトルです。
2023年には、以下のボトルで再販売されています。
ビーフィーター バローズリザーブ
創業者のジェームズ・バローが19世紀に使用していたポットスチルで蒸留した珍しいビーフィーターです。
ファーストバッチは食前酒で有名なフランスの果実酒ジャン・ド・リレの樽、セカンドバッチはボルドーのワイン樽で熟成されており、樽由来の豊かなフレーバーが楽しめるユニークなジンです。
最後に
「ビーフィーター」ジンについて紹介しました。
世界中に愛されているジン「ビーフィーター」は、ロンドンの象徴、beefeaterの名前にふさわしいジンといえます。
また、有名なジンにも関わらず、リーズナブルで手に入りやすいのも大きな魅力です。
そんな「ビーフィーター」ジンを、ぜひ一度味わってみてください。