グレンアラヒーとは|注目のスペイサイドモルトを徹底解説

_グレンアラヒーとは|特徴・歴史・製法を徹底解説

グレンアラヒーは、スコットランド・スペイサイドのシングルモルトです。
マスターディスティラーのビリー・ウォーカー氏の手腕による上質な銘柄がリリースされており、近年では世界的な品評会で輝かしいアワードを獲得しています。

そんなグレンアラヒーの特徴と魅力、蒸留所の歴史を紹介します。
「注目のシングルモルトを飲んでみたい」「上質なスペイサイドモルトを探している」という方は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を書いた人
まむ
  • 都内オーセンティックバーの元バーテンダー
  • ウイスキーエキスパート所持

ジンやウイスキーを中心に、これまで300種類以上のお酒を飲んできました。実体験をもとに、「本当に美味しい」と思ったお酒を紹介します。

目次

グレンアラヒーとは

グレンアラヒー

グレンアラヒーはスコットランドのシングルモルトで、8年、12年、15年とさまざまな熟成年数のボトルがリリースされています。

グレンアラヒー蒸留所は、もともとブレンデッドウイスキーの原酒製造用に建てられましたが、ビリー・ウォーカー氏の買収によりシングルモルトをリリースするようになりました。

代表銘柄GlenAllachie 12y
原産国/種類スコットランド/シングルモルト
蒸留所グレンアラヒー蒸留所
設立年1967年
所有グレンアラヒー・ディスティラーズ(独立経営)
輸入元株式会社ウィスク・イー

30秒で読める!グレンアラヒーの5つの特徴

「グレンアラヒーのユニークポイントだけ知りたい」という方のために、30秒で読める5つの特徴を紹介します。

  1. ブレンデッド用の原酒製造から、シングルモルトリリースに転身した蒸留所
  2. マスターディスティラーは偉大なキャリアを持つビリー・ウォーカー氏
  3. 長時間発酵によるリッチな酒質
  4. 全製品がノンチルフィルター・ノンカラー(無着色)
  5. ワールド・ウイスキー・アワード2025でワールドベスト(世界最高賞)獲得

「GlenAllachie」の名前の由来

スコットランドの丘

グレンアラヒー(GlenAllachie)はスコットランドのゲール語で「岩の谷」という意味です。

Glenは「谷(渓谷)」という意味で、スコットランドの地名によく使用されます。
Allachieは「岩の多い場所」「石のある場所」といった意味です。

蒸留所近隣にアラヒーという丘(Ben Allachie/ベン・アラヒー)があるため、この名前になったと考えられています。

グレンアラヒー蒸留所の歴史

グレンアラヒーの歴史を、次のトピックに沿って紹介します。

  • 蒸留所設立(1967年~)
  • ビリー・ウォーカー氏による買収(2017年~)
  • シングルモルトブランドとしての飛躍(2018年~現在)

蒸留所設立(1967年~)

グレンアラヒー蒸留所

グレンアラヒーは1967年に設立された比較的新しい蒸留所です。
スコティッシュ&ニューカッスル社によって、ブレンデッドウイスキー「マッキンレー」の原酒確保のために建設されました。

まむ

もともとは原酒製造の蒸留所。
シングルモルトはリリースしていませんでした。

蒸留所の設計を担当したウィリアム・デルム・エヴァンス氏は蒸留所建設の第一人者で、タリバーディン蒸留所やアイル・オブ・ジュラ蒸留所も手がけた著名な設計者です。

彼が手掛けたグレンアラヒー蒸留所は、機能性と効率が重視された設計
設備は重力の法則に従って配置されており、例えばマッシュタン発酵槽は一段高い場所、ポットスチルは最も低い位置に置かれています。

これは、ウイスキーをつくる工程順に設備をより低い所に置くことで、原料が重力に従い自然に下部に流れる仕組みになっており、効率的なウイスキー製造が可能となっています。
さらに、当時画期的だった熱変換器によるプレヒーティングシステムがいち早く導入されており、エネルギーの有効利用も図られています。

ビリー・ウォーカー氏による買収(2017年~)

ビリー・ウォーカー氏
ビリー・ウォーカー氏

2017年、ビリー・ウォーカー氏がシーバス・ブラザーズから蒸留所を買収したことで、グレンアラヒーは大きな転機を迎えます。

ビリー・ウォーカー氏は業界で50年以上のキャリアを誇る、世界的に知られたマスターブレンダー/マスターディスティラーです。
1946年にスコットランド・ダンバートンで生まれたビリー・ウォーカー氏は、グラスゴー大学で化学を専攻。
ウイスキー業界に身を置いて以降は、数々の蒸留所で豊富な実績を重ねていきます。

1974年~バランタインズ・スコッチウイスキー・カンパニーで生産管理業務
1976年~インバーハウス・ディスティラーズでマスターブレンダーとして商品開発を担当
1983年~バーン・スチュワート・ディスティラーズでマスターブレンダー兼オペレーションズディレクター就任
ディーンストン蒸留所とトバモリー蒸留所の再建を主導
2004年~ベンリアック蒸留所を買収し、ベンリアック・ディスティラリー・カンパニーを設立
グレンドロナック蒸留所とグレングラッサ蒸留所も傘下に加えて再興
2016年上記3つの蒸留所を米国のブラウン・フォーマン社へ売却
2017年グレンアラヒー蒸留所を買収
2018年グレンアラヒーのシングルモルトをリリース
2021年ウイスキーマガジン主催の「※Hall of Fame(ホール・オブ・フェイム)」を受賞し、殿堂入りを果たす
ビリー・ウォーカー氏の実績

※Hall of Fame(ホール・オブ・フェイム):ウイスキー業界で長年にわたり特筆すべき貢献を果たした個人に贈られる賞
1974年~バランタインズ・スコッチウイスキー・カンパニーで生産管理業務
1976年~インバーハウス・ディスティラーズでマスターブレンダーとして商品開発を担当
1983年~バーン・スチュワート・ディスティラーズでマスターブレンダー兼オペレーションズディレクター就任。
ディーンストン蒸留所とトバモリー蒸留所の再建を主導
2004年~ベンリアック蒸留所を買収し、ベンリアック・ディスティラリー・カンパニーを設立。
グレンドロナック蒸留所とグレングラッサ蒸留所も傘下に加えて再興
2016年上記3つの蒸留所を米国のブラウン・フォーマン社へ売却
2017年グレンアラヒー蒸留所を買収
2018年グレンアラヒーのシングルモルトをリリース
2021年ウイスキーマガジン主催の「※Hall of Fame(ホール・オブ・フェイム)」を受賞し、殿堂入りを果たす
ビリー・ウォーカー氏の実績

※Hall of Fame(ホール・オブ・フェイム):ウイスキー業界で長年にわたり特筆すべき貢献を果たした個人に贈られる賞

2018年、ビリー・ウォーカー氏は買収からわずか9カ月後にシングルモルトをリリース。
グレンアラヒー10年、12年、15年、18年のボトルをコアレンジとして展開しました。

これほど早期に長期熟成ボトルをリリースできたのは、蒸留所に原酒が豊富に貯蔵されていたためです。
ビリー・ウォーカー氏は蒸留所の買収時に原酒も一緒に買い取り、従来ブレンディング用だった原酒をシングルモルトに変換しました。

シングルモルトブランドとしての飛躍(2018年~現在)

グレンアラヒーはシングルモルトブランドとしてのデビューからわずか数年で、世界的な権威ある賞を数多く受賞し、その品質の高さを証明しています。

特に注目したいのは、2025年のワールド・ウイスキー・アワード(WWA)での快挙です。
WWA2025において、グレンアラヒー12年はシングルモルト部門のワールドベストを受賞し、世界最高のシングルモルトと認定されました。

WWA 2021においても、「グレンアラヒー 10年 カスクストレングス」がシングルモルト部門でワールドベストを受賞しています。

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グレンアラヒーの製法の特徴

グレンアラヒー蒸留所には4基のポットスチル(ストレートヘッド型とランタン型)があり、6基のステンレス製の発酵槽が設置されています。
仕込み水は、ベンリネス山近くの泉の水が使用されています。

そして、すべての製品がノンチルフィルター・ノンカラー(無着色)
ウイスキーの歴史を示す年数表記にもこだわっており、ノンエイジ(NAS:No Age Statement)のボトルはリリースされていません。

グレンアラヒーの製法について、次のトピックに沿ってさらに詳しく解説します。

  • 「常に進化を目指す」製造哲学
  • 生産量を抑えてスピリッツの品質を追及
  • 麦芽はピートとノンピートの混合

「常に進化を目指す」哲学

グレンアラヒーの製造哲学について、ビリー・ウォーカー氏は次のように述べています。

We don’t pursue absolute consistency; we pursue absolute perfection. If it’s a little better than the previous batch, that’s what we’re aiming for. If the colour is marginally different, that’s because it’s natural.
– Billy Walker, Master Distiller

私たちは絶対的な一貫性を求めているのではなく、絶対的な完璧さを追求しています。前回のバッチよりも少しでも良いものができたら、それが私たちの目指すところです。色がわずかに違っていても、それは自然なことです
– ビリー・ウォーカー、マスターディスティラー

引用:Our Philosophy – The GlenAllachie Distillery

グレンアラヒーは、品質の均一性よりも「常に前進し続ける」ことを哲学としています
ウイスキーを製造するたび、前回バッチよりも品質が上回ることを目指しているため、継続的に進化を遂げていくブランドだといえるでしょう。

まむ

今後の展開も楽しみなブランド!

生産量を抑えてスピリッツの品質を追及

規模の大きいグレンアラヒー蒸留所は、年間400万リットルのアルコールを製造できる生産能力を持っています。
しかし現在は、生産量を100万リットルに抑えて稼働しています。

理想的なスピリッツ製造のために生産量を抑制し、代わりに原料の発酵時間を長めに設定しているのです。

グレンアラヒーの発酵時間は120時間〜160時間で、一般的なスコッチウイスキーの発酵時間が48〜72時間程度であることを考えると、非常に長い時間をかけていることが分かります。

長時間発酵を行うとエステルやその他の香味成分が十分に生成されるので、豊かな風味の原酒が製造されます。
力強いフレーバーの原酒なら、樽熟成において原酒が樽香に負けることはありません。
ビリー・ウォーカー氏は、高品質で香り豊かなシェリー樽で熟成させることを想定し、芯の強いリッチな原酒をつくるべく長時間発酵を採用しました。

麦芽はピートとノンピートの混合

麦芽

グレンアラヒーでは、クリスプ社のポートゴードン製麦所の麦芽を使用しています。

ピーテッド麦芽(フェノール値:60〜80ppm)と、ノンピートの麦芽を混合して使用しており、配合比率はピーテッド麦芽が15%・ノンピートが85%です。

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グレンアラヒーのラインナップ

グレンアラヒーの以下のラインナップを、国際コンペの受賞歴もあわせて紹介します。

  • グレンアラヒー 8年
  • グレンアラヒー 12年
  • グレンアラヒー 10年 カスクストレングス
  • グレンアラヒー10年 キュヴェカスクフィニッシュ
  • グレンアラヒー 15年
  • グレンアラヒー 18年

グレンアラヒー 8年

グレンアラヒー8年

グレンアラヒー8年は、ペドロヒメネスシェリー樽とオロロソシェリー樽の原酒がメインで構成されており、そこに新樽と赤ワイン樽の原酒を少量加えてつくられています。

ヘザーハニーやバタースコッチの香り、甘いスパイスとジンジャーの風味が楽しめます。

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グレンアラヒー 12年

グレンアラヒー12年

グレンアラヒー12年は蒸留所のフラッグシップボトルです。

マスターディスティラーのビリー・ウォーカー氏の「卓越した樽材こそが最高のウイスキーを生み出す」という哲学に基づき、厳選されたシェリー樽による熟成原酒を中心に構成されています。
8年同様、ペドロヒメネスシェリー樽、オロロソシェリー樽の他、新樽と赤ワイン樽が使用されています。

ダークチョコレートや糖蜜、ヘザーハニーの香り、甘いスパイスとモカ、バタースコッチの風味。
華やかで軽やかなスタイルが多いスペイサイドモルトとしては珍しく、しっかりとした骨格と奥行きのある豊かな味わいが特徴です。

2025年のWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)では、シングルモルト部門において世界一の称号・最高金賞(ワールドベスト)を獲得し、次のように評価されています。

審査員コメント
リッチなサルタナ(干しブドウ)、フラップジャック(オーツ麦で作られたイギリスの伝統菓子)、ミルクチョコレートの香りにアセトンのニュアンス。口に含むと、ドライアップル、チャツネ、オレンジピール、ナツメグ、シナモンが現れ、バニラカスタードがそれを引き立てる。フィニッシュはミディアムロング、オイリーでやや温かみがあり、とても楽しい。

World Whiskies Awards 2025 – Winners

グレンアラヒー 10年 カスクストレングス

グレンアラヒー10年 カスクストレングス

ビリー・ウォーカーのブレンドの技が光る、グレンアラヒー10年のカスクストレングス
ペドロヒメネスシェリー樽、オロロソシェリー樽、赤ワイン樽、新樽による原酒が使用されており、59.7%という高いアルコール度数から成るパンチの効いた味わいが魅力です。

イチジクシロップ、ローストヘーゼルナッツの香り、ハチミツの甘い風味。

2021年のWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)では、シングルモルト部門・最高金賞(ワールドベスト)を獲得しており、以下のように評価されました。

審査員からは、以下のようにコメントされています。

審査員コメント
香りは最初にソフトに開き、軽いトースト香、オークと蜂蜜のニュアンス。口に含むとドライアプリコット・ホワイトペッパー・クローブなど少しパンチの効いた風味が広がり、それらを柔らかなキャラメルやパイナップル、コーヒーの風味がバランスよく包み込み、フィニッシュへにつながります。

World Whiskies Awards 2021 – Winners

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グレンアラヒー10年 キュヴェカスクフィニッシュ

グレンアラヒー10年 キュヴェカスクフィニッシュ

グレンアラヒー10年 キュヴェカスクフィニッシュは日本市場向けの限定商品で、2022年12月にリリースされました。

「キュヴェ(Cuvée)」とは、異なる原料(畑・ブドウ品種・ヴィンテージなど)からつくられた液体をブレンドし、一つの製品として単一ラベルの元でボトリングされるフランスワインのこと。

キュヴェにヒントを得て誕生したのが、この限定品のグレンアラヒーです。

バーボン樽の原酒を5つの異なる樽で後熟させ、それらをブレンド後にアルコール度数48%でボトリング。
オロロソシェリー樽由来のスパイスとペドロヒメネス樽由来の深い甘味、マルサラワイン樽と赤ワイン樽由来の豊かなフルーツ、そして新樽由来のウッディな風味が見事に調和しています。

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グレンアラヒー 15年

グレンアラヒー15年

グレンアラヒー15年は、シェリー樽の品質に対する蒸留所のこだわりを体現したボトルです。

12年よりもシェリー樽原酒の比率が高く、複雑で濃厚、奥行きのある贅沢な味わいと長い余韻があります。
ヘーゼルナッツやダークチェリーの香り、ココア、ジンジャー、オレンジピールの味わいが楽しめます。

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グレンアラヒー 18年

グレンアラヒー18年

ペドロヒメネス樽、オロロソシェリー樽、新樽の厳選した原酒のみが使用された、18年熟成のグレンアラヒーです。
熟成のピークに達したと判断されるまで、継続的に見守られながら製造された贅沢なウイスキーです。

ハチミツやカカオ、バニラやシナモンの香り、ダークチェリーやバタークリームのような濃厚な味わい。
上品で洗練された、リッチな風味のシングルモルトです。

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最後に

ウイスキーを味わう

スペイサイドのシングルモルト、グレンアラヒーを紹介しました。

もともとはブレンデッド用の原酒製造蒸留所として設立され、ビリー・ウォーカー氏の買収以降はシングルモルトとしての地位を確立した注目のウイスキー。

長時間発酵や厳選された樽の使用など、より良い品質を追求する姿勢が生み出すリッチで奥深い味わいが特徴です。

上質なスペイサイドモルトを探している方や、シェリー樽熟成のウイスキーが好きな方は、ぜひグレンアラヒーを手に取って、リッチで力強い味わいを体験してみてください。

_グレンアラヒーとは|特徴・歴史・製法を徹底解説

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