ピーティ・スモーキーなウイスキー13選|ピートの正体も徹底解説【元バーテンダー厳選】

ピーティ・スモーキーなウイスキー13選|ピートの正体も徹底解説【元バーテンダー厳選】

ウイスキーを表現する上で欠かせない「ピーティ」「スモーキー」という表現。
ピーティとは、正露丸やヨードのような薬品香と、燻製を思わせるスモーキーな香りが混ざりあったフレーバーを指します。

このフレーバーを生み出す要因のひとつが「ピート」で、今回はその解説と共にピートの効いたスモーキーなウイスキー13選を紹介します。

まむ

ピーティなウイスキー大好き!バーテンダー時代はたくさん飲みました。

今まで飲んできた中で、特におすすめのモルトウイスキーをピックアップしました。
ピーティ&スモーキーなウイスキーを探している方は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を書いた人
まむ
  • 都内オーセンティックバーの元バーテンダー
  • ウイスキーエキスパート所持

ジンやウイスキーを中心に、これまで300種類以上のお酒を飲んできました。実体験をもとに、「本当に美味しい」と思ったお酒を紹介します。

目次

ピートとは何か?

ピートとは泥炭のことで、ウイスキーの製造工程で使用される燃料です。
ピートの正体と役割について、次の3つに分けて解説します。

  • ピートの正体は泥炭
  • ピートが使用されるのは製麦工程
  • ピート香の強さを表すフェノール値(ppm)

ピートの正体は泥炭

ピート

ピートとは、植物が枯れて積み重なり長い年月をかけて炭化した「泥炭」です。
コケや草が十分に分解されずにできるのが泥炭で、泥や粘土に似た質感を持ち、乾燥させて燃料に使用されます。

まむ

ウイスキーの香りを表現する「ピーティ」はピートが由来。

湿地帯で採取されるピートはかつては一般家庭の暖房用燃料として使われており、現在でも一部地域で燃料として使用されています。

そんなピートの主成分は、スコットランドやアイルランドに自生するヘザー(ヒース)という植物や水生植物です。

ヘザー

ヘザーとはツツジ科の野草で、このヘザーをたっぷりと含んだピートがスコッチウイスキーの香りをつくる要素のひとつとなっています。

地域によって自生する植物が異なるため、ヘザーが大量に含まれたピートだけでなく、採取場所によってはコケが大量に含まれているピートもあり、内容物によってフレーバーが異なります。

ピートが使用されるのは製麦工程

ウイスキーの原料である大麦

ウイスキーづくりでピートが使われるのは「製麦」という工程です。
製麦とは、原料の大麦を発芽させて麦芽(モルト)をつくる工程で、製麦は主に3つのステップで構成されています。

  1. 大麦を水に浸して発芽環境を整える
  2. 空気を送り込みながら攪拌して発芽を促す
  3. 麦芽を乾燥させて発芽した大麦の成長を止める

ピートは製麦の最後のステップ「乾燥」の際に、燃料のひとつとして用いられます

麦芽の乾燥は、キルンという三角屋根の塔で行われるのが昔ながらの方法で、網目状の床に発芽させた大麦を広げ、その下で燃料を焚いて麦芽を乾燥させます。
その燃料にピートを使うことで、スモーキーな燻香が麦芽に付与されます。

燃やされているピート

使用するピートの内容や炭化の進み具合、使用量によって麦芽に付くフレーバーは異なり、各蒸留所の職人がそれを見極めながら調整しています。

ピートを投入するタイミングによってもフレーバーは変化し、例えば麦芽にまだ水分が十分に残っているタイミングで投入すれば、麦芽が煙を吸収しやすいため香りが強く加わります。
一方、ほぼ乾燥して麦芽に水分がなくなっている状態でピートを投入すれば、香りは控えめに付きます。

なお、ピートは必ずしも使用されるわけではなく、まったく使用しない蒸留所も多数あります。

ピートを使用してつくられた麦芽はビーテッド麦芽、使わない場合はノンピーテッド麦芽とも呼ばれます。

ピートの強さを表すフェノール値(ppm)

グラスに注がれるウイスキー

ウイスキーのピートレベルは、フェノール値という単位で数値化されます。

フェノール(phenol)とは有機化合物のことで、ベンゼン環(正六角形で結びついた分子構造)を代表とする不飽和有機化合物の一群である「芳香族化合物」のひとつです。

フェノール系化合物は水溶性でエチルアルコールによく溶ける性質を持ち、特有の薬品臭があります。
そんなフェノールの含有量をppm(parts per million※100万分の1)という単位で表したものが「フェノール値」で、一般的に数値が高い銘柄ほどピーティだと考えられています。

香りの感じ方や好みは人それぞれですが、20〜30ppm程度がややピーティな銘柄、40〜50ppmは強くピート香を感じる銘柄です。

まむ

100ppm超えの銘柄もあります!

ただし、同じフェノール値でも熟成年数や樽の種類によって実際に感じる香りの強さは異なるため、フェノール値はあくまでも目安のひとつとして覚えておくと良いでしょう。

ピートの効いたスモーキーなウイスキー13選

ウイスキーグラスに入ったスモーキーなウイスキー

ここからは、ピートの効いたスモーキーなウイスキーの銘柄13選を紹介します。

紹介する銘柄の多くは、スコットランド・アイラ島でつくられる「アイラモルト」です。
アイラ島はピートの産地であり、島の多くの蒸留所ではピートを使って麦芽を乾燥させているため、スモーキーなウイスキーが多く製造されています。

アイラ以外の銘柄を含め、マイルドな味わいのものから圧倒的なフェノール値をほこる銘柄まで幅広く紹介するので、参考にしてみてください。

  • シングルモルト余市
  • ボウモア12年
  • タリスカー ストーム
  • ラフロイグ10年
  • カリラ12年
  • スカラバス アイラシングルモルト
  • アードベッグ10年
  • ラガヴーリン16年
  • ビッグピート
  • ロウカスク ピートリーク10年
  • ラグ キルモリー エディション
  • オクトモア15.1 スコティッシュ・バーレイ
  • オクトモア15.1 アイラ・バーレイ

シングルモルト余市

余市シングルモルト

ニッカウヰスキーの「余市」は北海道にある余市蒸留所でつくられているジャパニーズウイスキーで、重厚かつピーティな味わいのシングルモルトです。

超軟水の余市川伏流水を仕込み水に、石炭による直火蒸留でつくられるのが大きな特徴。
ストレートヘッド型のポットスチルによって、ヘビーで骨太な味わいに仕上がっています。

ピートの力強さと香ばしさ、スモーキーな余韻が味わえる「余市」を堪能するなら、ロックやトワイスアップ、少し濃いめのハイボールで飲むのがおすすめです。

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ボウモア 12年

ボウモア 12年

アイラモルトのボウモアは、フェノール値20〜25ppmという穏やかなピーティさを持つウイスキーで、スモーキーウイスキーの入門におすすめの銘柄です。

「アイラモルトの女王」と称され、気品あふれる芳香とマイルドな味わい、ピーティなコクとフルーティーさを併せ持っています。

蒸留所の創業は1779年でアイラ島最古であり、製造に使用するうちの約3割がフロアモルティングによる自家製麦芽です。

まむ

近年では製麦を専門業者に委託する蒸留所が増えており、自家製麦芽(=自社で製麦)は珍しいのです。

バーボン樽とシェリー樽で熟成されたモルトがブレンドされており、スモーキーさと柔らかなフルーティーさがバランス良く味わるのが特徴。
ストレートでじっくり味わいたい逸品です。

タリスカー ストーム

タリスカー ストーム

タリスカーはスコットランド・スカイ島の蒸留所でつくられているシングルモルトで、ラベルには島の荒々しい海岸線と「Made in the Sea」という文字が印刷されています。

タリスカーの味わいは「ピリリとする胡椒の風味」「爆発するような刺激」が特徴で、それをより強く際立たせているのが、この「タリスカー ストーム」です。

まむ

一口目のインパクト大!

力強い味わいとドライでシャープな風味、スモーキーな香りはまるで嵐の海を体現しているような力強さ。
ほのかな甘みや柑橘風味もありバランスが良く、飲み方はハイボールに胡椒を振りかける「スパイシーハイボール」がおすすめです。

ラフロイグ 10年

ラフロイグ10年

ラフロイグは世界的な人気を誇るアイラモルトを代表する銘柄で、ゲール語で「広い湾の美しい窪地」という意味を持ちます。

ラフロイグ蒸留所では伝統的なフロアモルティングによる製麦を行っており、海藻やコケをたっぷり含んだピートの香りがしっかりと麦芽に付与されています。

麦芽のフェノール値は40〜45ppmで「正露丸」「ヨード香」「消毒薬」などと評される強烈な香りが特徴で、一度飲んだら病みつきになるシングルモルトです。

まむ

ラフロイグ、最初にはまったアイラモルトです!

アイラモルトの個性を存分に味わえるためピート好きには外せない一本。
ロックやストレート、ハイボールで飲むのがおすすめです。

カリラ 12年

カリラ12年

ゲール語で「アイラ海峡」の意味を持つカリラは、スモーキーかつドライな味わいのアイラモルトです。

1846年創業の蒸留所はアイラ島最大の大きさで、麦芽のフェノール値は35〜38 ppmと非常にピーティ
背の高いポットスチルで蒸留されているライトボディのウイスキーで、薬品香よりも煙や石灰のようなニュアンスが強く、甘みがありドライで潮っぽい味わいです。

まむ

ドライな刺激がガツンときます!

余韻は長くおだやかに続き、スパイシーさも感じられるおすすめのアイラモルトです。

スカラバス アイラシングルモルト

スカラバス

スカラバスは、ボトラーズ会社のハンターレインからリリースされているシングルモルトウイスキーです。
使用されているのはアイラモルト(銘柄はシークレット)で、着色や冷却濾過を施さずにボトリングされています。

装飾されたスカラバスの文字部分には、小さく”ONLY THOSE WHO… SEEK SHALL FIND”のメッセージ。
「探す者のみが見出すだろう」という神秘的なキャッチフレーズが書かれています。

香りはバニラのように甘く、スモーキーな香りが鼻に抜け、時間がたつにつれて潮っぽい風味が増します。
余韻はすっきりしており、飲み方はハイボールがおすすめです。

まむ

ハイボールが美味し過ぎて、あっという間にボトルが空になってしまった・・・!

金色ラベルが素敵なボトルで、ギフトにもおすすめのスモーキーなウイスキーです。

アードベッグ 10年

アードベッグ10年

アードベッグは世界中に熱狂的なファンを持つ人気のアイラモルトで、麦芽のフェノール値は50〜65ppmという非常にヘビーなウイスキー
ピート香・スモーキーフレーバー・薬品香が強く、一度飲んだらクセになる味わいです。

特にバーボン樽熟成による香ばしい煙の風味は素晴らしく、カカオやほのかな柑橘が加わった香りのバランスも味わい深いウイスキーです。

まむ

煙です。煙を味わう感じがクセになる。

水を加えても力強さと味わいのバランスは崩れず、ロックでもハイボールでも楽しめます。

アードベッグのラインナップは種類豊富で、この「10年」の他にも「ウーガダール」「コリーブレッカン」など、インパクトのあるスモーキーなウイスキーが多数あります。

ラガヴーリン 16年

ラガヴーリン 16年

発酵・蒸留・熟成に長い時間をかけて丁寧につくられているラガヴーリンは、非常に重厚感のあるリッチなアイラモルトです。
どっしりとした深みのあるスモーキーさ、熟成感、カカオ、正露丸のような薬品香が味わえます。

まむ

パンチがあってヘビー。一口飲めば多幸感に包まれます。

スモーキー好きならぜひ一度は飲んでほしい、職人の手間が惜しみなくかけられた贅沢ウイスキーです。

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ビッグピート

ビッグピート

ビッグピートは、ダグラスレインというボトラーズ業者がつくっているブレンデッドモルトです。

ビッグピートには「BIG PEAT(たっぷりのピート)」「 Big Pete(ピートおじさん)」の二つの意味があり、ラベルにはインパクト大のおじさまが描かれています。

まむ

ピートおじさん=地元アイラ島のおじさん。

ブレンドされているのはアードベッグ、カリラ、ボウモア、ポートエレンの4種で、強烈なピート香とパンチの効いた燻香が楽しめるユニークなウイスキーです。

ロウカスク ピートリーク 10年 アイラ シングルモルト リチャーカスク フィニッシュ

ブラックアダー ロウカスク ピートリーク 10年 アイラ シングルモルトリチャーカスク フィニッシュ

ピートリークはボトラーズ会社のブラックアダーが製造しており、厳選されたピーティな原酒から成るウイスキーシリーズです。

「ロウカスク」とはブラックアダーのコンセプトのひとつで、「樽出しのシングルモルトの深みをあるがままに味わってもらう」という考え方
冷却濾過せず沈殿物の澱も含めてそのままボトリングしているため、ピートリークはウイスキー本来の力強さを堪能できます。

まむ

ブラックアダー、強くて大好き!

そんなブラックアダーがリリースしている「ロウカスク ピートリーク 10年 アイラ シングルモルトリチャーカスク フィニッシュ」は、アルコール度数は58〜59%、フェノール値は20〜25ppm。
フェノール値はそれほど高くないのですが樽出しのため非常にピーティかつパワフルで、アイラモルト特有の潮っぽさとヨード香が感じられるエッジの効いた一本です。

ボトルの底には澱が沈んでいますが、正常な状態です。

ラグ キルモリー エディション

ラグ キルモリー エディション

ラグ キルモリー エディションは、2019年操業のラグ蒸溜所がつくるシングルモルトです。

ラグ蒸溜所はスコットランドのアラン島南部に位置し、このラグ キルモリー エディションはファーストフィルのバーボンバレル原酒を100%使用した、蒸留所のフラッグシップボトル。

フェノール値50ppmのヘビーピーテッドモルトが使用されています。

まむ

ずっしり重く、長い余韻!

オレンジやグレープフルーツなどの柑橘系の香りに、土っぽさとスモーキーさが調和し、葉巻や古いレザーのようなニュアンスで、個性あふれる一本です。

オクトモア15.1 スコティッシュ・バーレイ

オクトモア15.1 スコティッシュ・バーレイ

オクトモアは世界で最もスモーキーなウイスキーとして知られており、この「オクトモア15.1 スコティッシュ・バーレイ」はフェノール値は108.2ppmという圧倒的な高さを持っています。

まむ

ppm、なんと100超え!

オクトモア15.1の原料は2017年に収穫されたスコットランド産コンチェルト種大麦で、熟成樽はファーストフィルのバーボン樽と、リチャーリング(樽の内側を再度焦がすこと)バーボン樽。

5年間熟成させた後にカスクストレングスに近い状態でボトリングされており、アルコール度数は59.1%です。
濃厚なピート香にスモーキーな香りで、ほのかなバニラカスタード、焦げたオークの絶妙なバランスが楽しめます。

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オクトモア15.1  アイラ・バーレイ

オクトモア15.1  アイラ・バーレイ

オクトモア15.1  アイラ・バーレイは、世界最高レベルのフェノール値307.2ppmを記録した驚異的なアイラモルトです。

まむ

さ、さ、300??!!

原料はアイラ島産の品種改良したコンチェルト種大麦で、製造するブルックラディ蒸留所から3.2キロに位置する1軒の農場が生育しています。
麦の生育から製造・ボトリングまですべてアイラ島で行っており、アイラ島のテロワールを色濃く体現しています。

熟成樽は「ファーストフィルのバーボン樽」と「ファーストフィルのオロロソシェリー樽」で、アイラ島内で5年間熟成。
土っぽさや煙、コクのある甘さ、シェリー樽由来のフルーティーさがあり、力強く非常にリッチな味わいが堪能できる個性的なウイスキーです。

最後に

複数のアイラモルト

ピートの効いたスモーキーなウイスキーは、フェノール値や熟成年数などの違いによってさまざまな個性があります。

ボウモアのようなマイルドなものからアードベッグなどの強烈なピート香が特徴のもの、さらにオクトモアといった世界最強クラスのフェノール値を持つものまで、スモーキーウイスキーの世界は非常に奥が深いといえるでしょう。

興味が湧いた銘柄があれば、ぜひ一度試してみてください。
高価なものもあるので、まずはBarで一杯試してみてはいかがでしょうか。

お好みのものが見つかったら、ぜひあなたのウイスキーコレクションに加えてみてくださいね。

ピーティ・スモーキーなウイスキー13選|ピートの正体も徹底解説【元バーテンダー厳選】

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