YUZA(遊佐)は、2018年に誕生した山形県・遊佐蒸溜所でつくられているウイスキーです。
豊かな湧水と清らかな空気に恵まれた環境でつくられるYUZAは、少量生産で品質が高く、国際的な品評会でも数々のアワードを受賞しています。

私も山形出身なので、個人的に大注目!
今回はそんなYUZAを飲んだ感想、特徴や誕生までのあゆみを紹介します。


- 都内オーセンティックバーの元バーテンダー
- ウイスキーエキスパート所持
ジンやウイスキーを中心に、これまで300種類以上のお酒を飲んできました。実体験をもとに、「本当に美味しい」と思ったお酒を紹介します。
YUZA(遊佐)ウイスキーとは


YUZA(遊佐)ウイスキーは、焼酎メーカーの金龍が運営する遊佐蒸溜所で製造されています。
蒸溜器はスコットランドのフォーサイス製、仕込み水は鳥海山(ちょうかいさん)の伏流水です。
代表銘柄 | YUZA シングルモルト ジャパニーズウイスキー |
---|---|
製造 | 株式会社金龍(1950年設立) |
蒸溜所 | 遊佐蒸溜所(山形県 飽海郡 遊佐町) |
ポットスチル | フォーサイス製 (ストレート型/バルジ型) |
仕込み水 | 鳥海山伏流水(軟水) |
蒸溜開始 | 2018年 |
初リリース | 2022年2月 (YUZA First edition 2022) |
ラベルには蒸溜所からの鳥海山の眺めが描かれています。


30秒で読める!YUZA(遊佐)の5つの特徴
「YUZAのユニークポイントだけ知りたい」という方のために、30秒で読める5つの特徴を紹介します。
- 山形県初のウイスキー蒸溜所として2018年に誕生
- 製造経験のない若手スタッフのみで蒸溜所をスタート
- 木製発酵槽と2種のポットスチルを使用し、高品質のウイスキーを製造
- ニューポット・ニューボーンはリリースせず、熟成3年以上の製品のみを販売
- 創業数年で国際品評会のアワードを複数獲得
【レビュー】YUZA Spring in Japan 2024の味わい


「YUZA Spring in Japan 2024」は、2024年4月に数量限定で発売されたシングルモルトです。
キーモルトはシェリー樽原酒で、4〜5年熟成させたファーストフィルのバーボン樽原酒がヴァッティングされています。
ストレートで飲むと、すぐさまシェリー樽由来の濃厚なフルーティさが感じられました。
次にカカオ、ハチミツの甘み。余韻は長く続きます。



うまぁ・・・。
リッチ&ワイルドという印象で、うま味が感じられるシングルモルトでした。



シェリーのインパクト大。
華やかで野性味を感じる力強さ!
アルコール度数は55%と高く、個人的にはマッカランの華やか風味をぐっと強くしたような印象。
大胆かつ癒されるような香味で、たとえば大きな仕事を終えた後に飲むような、自分へのご褒美ウイスキーにピッタリです。
山形生まれが感じたこと


このYUZA Spring in Japan 2024は、同郷の私にとっては「雪国の春の訪れ」を思い出させる味わいでした。
山形、特に私の地元は豪雪地帯で冬がとても厳しく、車が雪で埋もれるレベル。毎年雪かきにてんやわんやします。
しかも4月になっても雪が溶け切らず、道路脇には灰色に固まった雪がいつまでも残っていて、なかなか暖かくなりません。
そんな厳しい冬があるからこそ、春が来た時の喜びはひとしおでした。
YUZA Spring in Japan 2024の野性味あふれる味わいは、まさに雪国に訪れる力強い春を表現しているよう。
華やかな甘い香りは、春が訪れる喜びと解放感を思わせました。
遊佐蒸溜所の歴史とこだわり


遊佐蒸溜所は山形県初のウイスキー蒸溜所で、運営しているのは70年以上の歴史を持つ株式会社金龍です。
株式会社金龍は1950年山形県酒田市で創業された老舗の酒造メーカーで、1966年に現在の社名「金龍」となりました。
金龍は、焼酎ブランド「爽(さわやか)」を長年手掛けており、新たにウイスキー製造への道を開拓しました。
▼創業から初リリースまでの年表
1950年 | 山形県醗酵工業株式会社(後の金龍)が発足 |
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1966年 | 社名を株式会社金龍に変更 |
2017年 | スコットランドのフォーサイス社視察 遊佐蒸溜所着工 |
2018年 | ポットスチル開封・蔵入れ 遊佐蒸溜所竣工 蒸溜開始 |
2022年 | 2月にYUZA First edition 2022をリリース |
遊佐蒸溜所の誕生から初リリースまでの歴史をたどりながら、その独自の理念と製造へのこだわりを見ていきましょう。
- 遊佐蒸溜所の始まり
- 遊佐蒸溜所の指針「TLAS」
- 木製発酵槽と2種のポットスチル
遊佐蒸溜所の始まり
遊佐蒸溜所の誕生は、金龍の企業としての将来を見据えた判断から始まりました。
焼酎メーカーである金龍は、焼酎・日本酒の消費量減少と山形県の人口減少問題に直面し、新たな事業展開を検討していました。
その答えとして選んだのが、ウイスキー製造への参入です。
ウイスキー製造に適した土地を2年かけて探した結果、良質な水資源に恵まれた遊佐町吉出地区が選定されました。
蒸溜所設備はスコットランドのフォーサイス社に依頼し、施設のデザインから装置の制作(発酵槽以外)・設置までを一貫して発注。
2018年7月には単式蒸溜器(ポットスチル)が搬入され、同年9月にウイスキー製造免許を取得。
11月に初の蒸溜が行われ、山形県初の本格的なウイスキー蒸溜所が稼働しました。
当初の蒸溜所スタッフは、全員が製造経験のない若いメンバー。
経験者ではなく若い人材を起用したのは、遊佐蒸溜所独自の個性を育てるためという考えからでした。



ベテランが一人もいない?
びっくり!
開業準備から蒸溜初期までは、フォーサイス社のサポートチームが足を運んで技術指導を行いました。
初リリースは、2022年2月のYUZA First edition 2022。
同年5月にはインターナショナル・スピリッツ・チャレンジ2022で金賞を受賞し、初リリース製品ながら国際的な評価を獲得しました。
遊佐蒸溜所の指針「TLAS」


遊佐蒸溜所のウイスキーづくりの根幹には、TLASというコンセプトがあります。
TLASは「Tiny、Lovely、Authentic、Supreme」の頭文字を組み合わせたもので、これらは遊佐蒸溜所の方針を表現しています。
T:Tiny(ちいさな)
遊佐蒸溜所は敷地面積が約4,550㎡、蒸溜所面積は約620㎡と小規模です。
バスケコートが約420㎡なので、蒸溜所はその1.5倍くらいの広さ。
1日の生産量も比較的少なく、小規模であることで細部まで目が行き届く環境でウイスキーを製造しています。
L:Lovely(かわいい)
遊佐蒸溜所の真っ赤なドアは、地域景観に配慮してかわいらしくデザインされました。
山形の冬は寒さが厳しくどんよりと曇っており、人々はダークカラーの防寒具などに身を包んで寒さをしのいで今す。
そのような景色の中、地域に明るい彩りを添えられるようにと設計されたのがこのデザインです。
A:Authentic(本物の)
遊佐蒸溜所では、本場スコットランドの伝統的製法でウイスキーづくりを行っています。
伝統技術の本質を取り入れながら、日本らしい丁寧さとこだわりを融合させた本物のウイスキーを追求しています。
S:Supreme(最高の)
遊佐蒸溜所が最も重視するのが品質です。
熟成期間が3年に満たないウイスキーは市場に出さない方針で、ニューポット・ニューボーンは販売されていません。
遊佐蒸溜所では市場の話題性よりも、品質追求を優先しています。
たとえば特殊な樽の使用などを前面に押し出すよりも、ウイスキー自体の品質を最優先しているのです。
この方針は、金龍の「品質本位」の信念を表しています。
金龍は、品質にこだわる日本酒メーカー9社の共同出資で設立されており、創業以来70年以上にわたって「品質本位」の精神を受け継いできました。
木製発酵槽と2種のポットスチル
遊佐蒸溜所の製造設備で特徴的なのは、木製の発酵槽と形状の異なる2種のポットスチルです。
遊佐蒸溜所の発酵槽は日本木槽木管株式會社製で、ダグラスファー(米松)の木製発酵槽を使用しています。
近年ではステンレス製の発酵槽を採用する蒸溜所が増えている中、遊佐蒸溜所は発酵槽5基すべてが木製です。
木製はステンレス製よりも管理に手間がかかるものの、木材に棲む微生物が香味に複雑さを付与するため、独特の風味が生まれます。
蒸溜器はフォーサイス社製で、形状の異なる2種類のポットスチルが使用されています。
初留釜は5,000ℓのストレートヘッド型、再留釜は容量3,400ℓのバルジ型です。
どちらの蒸溜器も下向きのラインアームを持ち、冷却装置にはシェル&チューブ式のコンデンサーが採用されています。
ポットスチルの形状と特徴を詳しく知りたい方は、こちらの用語辞典をご覧ください。
YUZAウイスキーの受賞歴


遊佐蒸溜所は創業からわずか数年という短期間で、国際的な品評会で高い評価を得ています。
世界的なコンペティションであるISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)や、WWA(ワールド・ウイスキー・アワード)において、次のアワードを獲得しています。
銘柄 | アワード |
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YUZA First edition 2022 | ・ISC 2022 テイスティングアワード「金賞」 ・WWA 2023 スモールバッチ・シングルモルト部門「銅賞」 |
YUZA Second edition 2022 | ・ISC 2023 テイスティングアワード「銀賞」 ・WWA 2023 スモールバッチ・シングルモルト部門「銀賞」 |
YUZA Medium Peated 2023 Spring | ・WWA 2024 シングルカスク・シングルモルト部門「金賞&カテゴリーウィナー」 |
YUZA 2023 | ・ISC 2024 テイスティングアワード「金賞」 ・WWA 2024 シングルモルト部門「銀賞」 |
YUZA Third edition 2023 | ・ISC 2024 テイスティングアワード「金賞」 ・WWA 2024 シングルモルト部門「銅賞」 |
特に注目すべきアワードは、YUZA Medium Peated 2023 SpringがWWAにおいて「カテゴリーウィナー」に選出されたことです。
ISCやWWAなどの国際コンペについて詳しく知りたい方は、ウイスキーの主要なコンペティション|ウイスキーの用語辞典をご覧ください。
YUZAウイスキーのラインナップ
現在生産されているYUZAの、主要なラインナップを紹介します。
紹介するYUZAは、すべて日本洋酒酒造組合の定める「ジャパニーズウイスキーの表示基準」に合致しています。
ジャパニーズウイスキーの表示基準を詳しく知りたい方は、日本洋酒酒造組合による「ジャパニーズウイスキーの表示基準」をご覧ください。
YUZA 2024


- リリース:2024年7月
- タイプ:シングルモルト
- アルコール度数:51%
YUZA 2024は遊佐蒸溜所のハウススタイルの原点といえるシングルモルトで、バーボン樽熟成の原酒が使用されています。
クリーンでフルーティ、バニラやハチミツの甘い香りが特徴です。


YUZA Spring in Japan 2024【数量限定】


- リリース:2024年4月
- タイプ:シングルモルト
- アルコール度数:55%
YUZA Spring in Japan 2024は、シェリー樽原酒をキーモルトにヴァッティングされた季節限定商品です。
ファーストフィルのバーボン樽の原酒も使用されており、シェリー樽由来の華やかさが強く感じられます。
濃厚でリッチ、うま味のあるウイスキーです。


YUZA 3rd Edition 2023【数量限定】


- リリース:2023年11月
- タイプ:シングルモルト
- アルコール度数:55%
YUZA 3rd Edition 2023は、ミズナラ樽、バーボン樽、シェリー樽の原酒がヴァッティングされています。
遊佐蒸溜所らしいフルーティさ、バニラの甘さ、かすかなピート香が重なる複雑な風味。
ISC 2024で「金賞」を受賞した実力派のウイスキーです。
YUZA シグネチャー・ブレンド


- リリース:2025年3月
- タイプ:ブレンデッド
- アルコール度数:48%
YUZA シグネチャー・ブレンドには、国産のグレーン原酒に、ミズナラ樽熟成を含む多彩なモルト原酒がブレンドされています。
フルーティで甘いアロマとフレーバー、ピートのニュアンスが感じられるブレンデッドウイスキーです。


YUZA クラシカル・ブレンド【数量限定】


- リリース:2024年10月
- タイプ:ブレンデッド
- アルコール度数:48%
YUZAクラシカル・ブレンドは、国産のモルト原酒・グレーン原酒のみを使用したブレンデッドウイスキー。
モルト比率は6割超、キーモルトはミズナラ樽の原酒です。
森を思わせる爽やかなアロマと、バニラやハチミツの甘さが感じられるウイスキーです。


最後に


山形発のウイスキー「YUZA」と、YUZA Spring in Japan 2024のレビューを紹介しました。
YUZA Spring in Japan 2024は、春を思わせるふくよかな味わいと、雪国の春のような力強さを感じさせるリッチな味わいが特徴。
そんなウイスキーをつくっている遊佐蒸溜所は、小規模ながら妥協のない品質を目指し、独自のウイスキーづくりを追及しています。
国際的な評価も高く、とくにWWA2024のカテゴリーウィナー受賞は、創業からわずか数年での快挙といえるでしょう。
山形生まれの本格派ジャパニーズウイスキーを、ぜひ一度味わってみてください!