ウイスキーを表現する上で欠かせない「ピーティ」「スモーキー」という表現。ピーティとは、正露丸やヨードのような薬品香と、燻製を思わせるスモーキーな香りが混ざりあったフレーバーを指します。
本記事では、このフレーバーを生み出す要因のひとつであるピートの解説と共に、ピートの効いたスモーキーなウイスキー13選を紹介します。
まむピーティなウイスキー大好き!バーテンダー時代はたくさん飲みました。
今まで飲んできた中で、特におすすめのモルトウイスキーをピックアップしました。ピーティ・スモーキーなウイスキーを探している方は、ぜひ参考にしてみてください。


- 都内オーセンティックバーの元バーテンダー
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ピートとは何か?
ピートとは泥炭のことで、ウイスキーの製造工程で使用される燃料です。ピートの正体と役割を次の3つに分けて解説します。
- ピートの正体は泥炭
- ピートが使用されるのは製麦工程
- ピート香の強さを表すフェノール値(ppm)
ピートの正体は泥炭


ピートとは、植物が枯れて積み重なり長い年月をかけて炭化した「泥炭」です。コケや草が十分に分解されずにできるのが泥炭で、泥や粘土に似た質感を持ち、乾燥させて燃料に使用されます。



ウイスキーの香りを表現する「ピーティ」はピートが由来。
湿地帯で採取されるピートはかつては一般家庭の暖房用燃料として使われており、現在でも一部地域で燃料として使用されています。ピートの主成分は、スコットランドやアイルランドに自生するヘザー(ヒース)という植物や水生植物です。


ヘザーとはツツジ科の野草で、このヘザーをたっぷりと含んだピートがスコッチウイスキーの香りをつくる要素のひとつとなっています。地域によって自生する植物が異なるため、ヘザーが大量に含まれたピートだけでなく、採取場所によってはコケが大量に含まれているピートもあり、内容物によってフレーバーが異なります。
ピートが使用されるのは製麦工程


ウイスキーづくりでピートが使われるのは「製麦」という工程です。製麦とは、原料の大麦を発芽させて麦芽(モルト)をつくる工程で、製麦は主に3つのステップで構成されています。
- 大麦を水に浸して発芽環境を整える
- 空気を送り込みながら攪拌して発芽を促す
- 麦芽を乾燥させて発芽した大麦の成長を止める
ピートは製麦の最後のステップ「乾燥」の際に、燃料のひとつとして用いられます。
麦芽の乾燥は、キルンという三角屋根の塔で行われるのが昔ながらの方法で、網目状の床に発芽させた大麦を広げ、その下で燃料を焚いて麦芽を乾燥させます。その燃料にピートを使うことで、スモーキーな燻香が麦芽に付与されます。


使用するピートの内容や炭化の進み具合、使用量によって麦芽に付くフレーバーは異なり、各蒸留所の職人がそれを見極めながら調整しています。
ピートを投入するタイミングによってもフレーバーは変化し、例えば麦芽にまだ水分が十分に残っているタイミングで投入すれば、麦芽が煙を吸収しやすいため香りが強く加わります。一方、ほぼ乾燥して麦芽に水分がなくなっている状態でピートを投入すれば、香りは控えめに付きます。
なお、ピートは必ずしも使用されるわけではなく、まったく使用しない蒸留所も多数あります。ピートを使用してつくられた麦芽はビーテッド麦芽、使わない場合はノンピーテッド麦芽とも呼ばれます。
ピートの強さを表すフェノール値(ppm)


ウイスキーのピートレベルは、フェノール値という単位で数値化されます。
フェノール(phenol)とは有機化合物のことで、ベンゼン環(正六角形で結びついた分子構造)を代表とする不飽和有機化合物の一群である「芳香族化合物」のひとつです。フェノール系化合物は水溶性でエチルアルコールによく溶ける性質を持ち、特有の薬品臭があります。
そんなフェノールの含有量をppm(parts per million※100万分の1)という単位で表したものが「フェノール値」で、一般的に数値が高いほどピーティだと考えられています。
香りの感じ方や好みは人それぞれですが、20〜30ppm程度がややピーティな銘柄、40〜50ppmは強くピート香を感じる銘柄です。



100ppm超えの銘柄もあります!
ただし、同じフェノール値でも熟成年数や樽の種類によって実際に感じる香りの強さは異なります。フェノール値は、あくまでも目安のひとつとして覚えておくと良いでしょう。
ピートの効いたスモーキーなウイスキー13選


ここからは、ピートの効いたスモーキーなウイスキーの銘柄13選を紹介します。
紹介する銘柄の多くは、スコットランド・アイラ島でつくられるアイラモルトです。アイラ島はピートの産地で、島の多くの蒸留所ではピートを使って麦芽を乾燥させてスモーキーなウイスキーを製造しています。
アイラ以外の銘柄を含め、マイルドな味わいのものから圧倒的なフェノール値をほこる銘柄まで幅広く紹介するので、参考にしてみてください。
- シングルモルト余市
- ボウモア12年
- タリスカー ストーム
- ラフロイグ10年
- カリラ12年
- スカラバス アイラシングルモルト
- アードベッグ10年
- ラガヴーリン16年
- ビッグピート
- ロウカスク ピートリーク10年
- ラグ キルモリー エディション
- オクトモア16.1 スコティッシュ・バーレイ
- オクトモア16.3 アイラ・バーレイ
シングルモルト余市


ニッカウヰスキーの「余市」は北海道にある余市蒸留所でつくられているジャパニーズウイスキーで、重厚かつピーティな味わいのシングルモルトです。
超軟水の余市川伏流水を仕込み水に、石炭による直火蒸留でつくられるのが大きな特徴。ストレートヘッド型のポットスチルによって、ヘビーで骨太な味わいに仕上がっています。
ピートの力強さと香ばしさ、スモーキーな余韻が味わえる「余市」を堪能するなら、ロックやトワイスアップ、少し濃いめのハイボールで飲むのがおすすめです。
ボウモア 12年


アイラモルトのボウモアは、フェノール値20〜25ppmという穏やかなピーティさを持つウイスキーで、スモーキーウイスキーの入門におすすめの銘柄です。「アイラモルトの女王」と称され、気品あふれる芳香とマイルドな味わい、ピーティなコクとフルーティーさを併せ持っています。
蒸留所の創業は1779年でアイラ島最古であり、製造に使用するうちの約3割がフロアモルティングによる自家製麦芽です。



近年では製麦を専門業者に委託する蒸留所が増えており、自家製麦芽(=自社で製麦)は珍しいのです。
バーボン樽とシェリー樽で熟成されたモルトがブレンドされており、スモーキーさと柔らかなフルーティーさがバランス良く味わえるのが特徴。ストレートでじっくり味わいたい逸品です。
タリスカー ストーム


タリスカーはスコットランド・スカイ島の蒸留所でつくられているシングルモルトで、ラベルには島の荒々しい海岸線と「Made in the Sea」という文字が印刷されています。タリスカーの味わいは「ピリリとする胡椒の風味」「爆発するような刺激」が特徴で、それをより強く際立たせているのが、このタリスカー ストームです。



一口目のインパクト大!
力強い味わいとドライでシャープな風味、スモーキーな香りはまるで嵐の海を体現しているような力強さ。
ほのかな甘みや柑橘風味もありバランスが良く、飲み方はハイボールに胡椒を振りかける「スパイシーハイボール」がおすすめです。
ラフロイグ 10年


ラフロイグはアイラモルトを代表する銘柄のひとつで、ゲール語で「広い湾の美しい窪地」を意味します。ラフロイグ蒸留所では伝統的なフロアモルティングによる製麦を行っており、麦芽には海藻やコケをたっぷり含んだピートの香りがしっかりと付与されています。
麦芽のフェノール値は40〜45ppmで、「正露丸」「ヨード香」「消毒薬」などと評される強烈な香りが特徴で、一度飲んだら病みつきになるシングルモルトです。



私が最初にはまったアイラモルトはラフロイグ。
アイラモルトの個性を存分に味わえるためピート好きには外せない一本。ロックやストレート、ハイボールで飲むのがおすすめです。
カリラ 12年


ゲール語で「アイラ海峡」の意味を持つカリラは、スモーキーかつドライな味わいのアイラモルトです。
1846年創業の蒸留所はアイラ島最大の大きさで、麦芽のフェノール値は35〜38 ppmと非常にピーティ。背の高いポットスチルで蒸留されているライトボディのウイスキーで、薬品香よりも煙や石灰のようなニュアンスが強く、ドライで潮っぽい味わいです。



ドライな刺激がガツンと来ます。
余韻は長く穏やかに続き、スパイシーさも感じられるおすすめのアイラモルトです。
スカラバス アイラシングルモルト


スカラバスは、ボトラーズ会社のハンターレインからリリースされているシングルモルトウイスキーです。使用されているのはアイラモルト(銘柄はシークレット)で、着色や冷却濾過を施さずにボトリングされています。
装飾されたスカラバスの文字部分には「ONLY THOSE WHO… SEEK SHALL FIND」のメッセージ。「探す者のみが見出すだろう」という神秘的なキャッチフレーズが書かれています。
香りはバニラのように甘く、スモーキーな香りが鼻に抜け、時間がたつにつれて潮っぽい風味が増します。余韻はすっきりしており、飲み方はハイボールがおすすめです。



ハイボールが美味し過ぎ。ボトルがあっという間に空になった。
金色ラベルが素敵なボトルで、ギフトにもおすすめのスモーキーなウイスキーです。
アードベッグ 10年


アードベッグは世界中に熱狂的なファンを持つ人気のアイラモルトで、麦芽のフェノール値は50〜65ppmという非常にヘビーなウイスキー。ピート香・スモーキーフレーバー・薬品香が強く、一度飲んだらクセになる味わいです。
バーボン樽由来の香ばしい煙の風味が素晴らしく、カカオやほのかな柑橘が加わった香りのバランスも味わい深いウイスキーです。水を加えても力強さと味わいのバランスは崩れず、ロックでもハイボールでも楽しめます。



煙そのものです。クセになる。
アードベッグのラインナップは種類豊富で、この「10年」の他にも「ウーガダール」「コリーブレッカン」など、インパクトのあるスモーキーなウイスキーが多数あります。
ラガヴーリン 16年


発酵・蒸留・熟成に長い時間をかけて丁寧につくられているラガヴーリンは、非常に重厚感のあるリッチなアイラモルトです。どっしりとした深みのあるスモーキーさ、熟成感、カカオ、正露丸のような薬品香が味わえます。



パンチがあってヘビー。一口飲めば多幸感に包まれます。
スモーキー好きならぜひ一度は飲んでほしい、職人の手間が惜しみなくかけられた贅沢ウイスキーです。
ビッグピート


ビッグピートは、ダグラスレインというボトラーズ業者がつくっているブレンデッドモルトです。名前には「BIG PEAT(たっぷりのピート)」「 Big Pete(ピートおじさん)」の二つの意味があり、ラベルには何とも言えない表情のおじさまが描かれています。



ピートおじさん=地元アイラ島のおじさん。
ブレンドされているのはアードベッグ、カリラ、ボウモア、ポートエレンの4種で、強烈なピート香とパンチの効いた燻香が楽しめるユニークなウイスキーです。
ロウカスク ピートリーク 10年 アイラ シングルモルト リチャーカスク フィニッシュ


ピートリークはボトラーズ会社のブラックアダーが製造しており、厳選されたピーティな原酒で構成されたウイスキーシリーズです。
「ロウカスク」とはブラックアダーのコンセプトのひとつで、「樽出しのシングルモルトの深みをあるがままに味わってもらう」という考え方。冷却濾過せず沈殿物の澱も含めてそのままボトリングしているため、ピートリークはウイスキー本来の力強さを堪能できます。



ブラックアダー、強くて大好き!
そんなブラックアダーがリリースしている「ロウカスク ピートリーク 10年 アイラ シングルモルトリチャーカスク フィニッシュ」は、アルコール度数は58〜59%、フェノール値は20〜25ppm。フェノール値はそれほど高くないのですが樽出しのため非常にピーティかつパワフルで、アイラモルト特有の潮っぽさとヨード香が感じられるエッジの効いた一本です。
ラグ キルモリー エディション


ラグ キルモリー エディションは、2019年操業のラグ蒸溜所がつくるシングルモルトです。ラグ蒸溜所はスコットランドのアラン島南部に位置し、このラグ キルモリー エディションはファーストフィルのバーボンバレル原酒を100%使用した、蒸留所のフラッグシップボトルです。
フェノール値50ppmのヘビーピーテッドモルトが使用されています。



ずっしり重く、長い余韻!
オレンジやグレープフルーツなどの柑橘系の香りに、土っぽさとスモーキーさが調和し、葉巻や古いレザーのようなニュアンスで、個性あふれる一本です。
オクトモア16.1 スコティッシュ・バーレイ


オクトモアは世界で最もスモーキーなウイスキーとして知られており、オクトモア16.1はフェノール値は101.4ppmという圧倒的な高さを持っています。



ppm、なんと100超え!
オクトモア16.1の原料はスコットランド産コンチェルト種大麦で、ファーストフィルのバーボン樽で5年間熟成。カスクストレングスに近い状態でボトリングされており、アルコール度数は59.3%です。濃厚なピート香とスモーキーな香りで、ほのかなチョコレートやココナツの風味、柔らかなスモークの余韻が楽しめます。
オクトモア16.3 アイラ・バーレイ


オクトモア16.3 はアイラ島のオクトモア蒸留所の畑で育った大麦のみを使用した、オクトモアシリーズ原点ともいえるウイスキーです。フェノール値は189.5ppmとかなり高い数値のアイラモルトです。
原料の大麦を生育している畑は、製造するブルックラディ蒸留所から3.2キロほどの場所に位置する農場です。麦の生育から製造・ボトリングまですべてアイラ島で行っており、アイラ島のテロワールを色濃く体現しています。
バーボン樽、ソーテルヌワイン樽、ペドロ・ヒメネスシェリー樽で5年間熟成されており、土っぽさ、塩気、シェリー樽由来のフルーティーさがあり、リッチで力強いウイスキーです。
最後に


ピートの効いたスモーキーなウイスキーは、フェノール値や熟成年数などの違いによってさまざまな個性があります。
ボウモアのようなマイルドなものからアードベッグなどの強烈なピート香が特徴のもの、さらにオクトモアといった世界最強クラスのフェノール値を持つものまで、スモーキーウイスキーの世界は非常に奥が深いといえるでしょう。興味が湧いた銘柄があれば、ぜひ一度試してみてください。高価なものもあるので、まずはBarで一杯試してみてはいかがでしょうか。
お好みのものが見つかったら、ぜひあなたのウイスキーコレクションに加えてみてくださいね。














